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東京地方裁判所 昭和37年(ワ)860号 判決

判   決

東京都港区赤坂青山南町六丁目一三六番地

原告

石井通信工業株式会社

右代表代表取締役

伊藤文健

右訴訟代理人弁護士

村上政之助

同都品川区東品川二丁目一七二番地

被告

日本興業株式会社

右代表者代表取締役

星野五三郎

主文

(一)  被告は原告に対し金一六万一、三六〇円及びこれに対する昭和三七年二月一七日から支払済までの年五分の割合による金員の支払をせよ。

(二)  原告その余の請求はこれを棄却する。

(三)  訴訟費用は被告の負担とする。

(四)  この判決は第一項に限り仮りに執行することができる。

事実

原告は「被告は原告に対し金一八万四、八六〇円およびこれに対する昭和三七年二月一七日より支払済までの年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、請求の原因として

一、原告会社従業員訴外篠原政男は、昭和三六年一〇月二六日午前九時半頃、原告所有の小型四輪貨物自動車(四―に九二四〇号)を運転して川崎市生田町内通称府中街道を府中方面から横浜方面に向つて進行し、小田急線踏切附近所在高津警察署登戸巡査派出所手前約二〇〇米の地点に差し蒐つたところ、先行する大型四輪貨物自動車が停止したので、これに続いて適当の距離を保つて停止したが、訴外小島幸三郎は、被告所有の大型四輪貨物自動車を運転して、右街道を進行し、右地点において停止中の右原告所有自動車に追突した。(以下省略)

理由

一、本件事故発生の事実(請求原因第一項)は当事者間に争がない。

二、まず、本件事故の原因について判断するに(証拠―省略)を総合すれば、小島幸三郎が被告会社の従業員として自動車運転の業務に従事するものであること及び同人が被告会社のため業務の執行中原告主張の日時に、時速約六〇粁の速度で被告自動車を運転し本件事故現場に差し蒐つた際、脇見操縦をしたため、先行車に続いて停止した原告自動車の発見が遅れ、急制動等の措置を講じたが間に合わず、原告自動車に追突し、更に、その衝撃によつて原告自動車を先行車後部に衝突させたことが認められ、右認定に反する証拠はない。右認定の事実によれば、本件事故は、被告会社の被用者小島幸三郎が被告会社のため業務執行中法令によつて定められた最高速度に違反し被告自動車を運転し、かつ、前方注視義務を怠つた過失により発生したものといわなければならない。

従つて、被告は右小島の使用者として原告に対し、本件事故による損害賠償義務がある。

三、そこで、本件事故による損害の点について検討する。

(一)  (証拠―省略) によれば、原告自動車は、本件事故によつて、後部及び前部左側窓その他に損傷を受け、原告は、右損傷修理のため、訴外多摩モータースに対し請し請求原因第四項(一)記載の修理代金七万六、九九〇円を支払い、同額の損害を蒙つたことが認められ、他に右認定に反する証拠はない。

(二)  (証拠―省略) によれば、つぎの事実を認定することができる。すなわち、

原告は右修理期間中原告自動車を使用することができなかつたため、

(1)  訴外木月運送店に対し、別表(一)記載1乃至4のとおり貨物運送を依頼し運送料金一万一、一七〇円を支払い、(2)訴外多摩モータースより原告自動車の代車として一日金二、〇〇〇円の割合で同年一一月三日から同月一三日までの間自動車一台を借り受け、右多摩モータースに対し使用料金二万円を支払い、(3)訴外山本英司より原告自動車の代車として別表(二)記載のうち8、16のコニーの分を除くその余のとおり自動車一台を借り受け同人に対し使用料金五万三、二〇〇円を支払い、右合計金八万四、三七〇円の費用を要し損害を蒙つた。別表(一)記載の5及び6の貨物運送は、原告が前記多摩モータースより原告自動車の代車を賃借使用中、同7の貨物運送は、原告が前記山本英司より同じく代車を賃借使用中夫々前記木月運送店に対し依頼したものと認められるから、特段の事情の認められない本件において右5、6、7の貨物運送料金合計金八、五〇〇円を本件事故による損害と認めることはできない。

又、原告が他の代車と同時に使用したものと認められるから別表(二)記載8、16の「コニー」の分の、本件事故による損害と認めることはできない。

(三)  原告主張の諸雑費中原告が訴外篠原英男に支給した手当金の損害については、証人(省略)の証言によれば、原告会社稲域工場長である同人が同工場の交際費から右篠原に対し本件事故の見舞金として贈与したものと認められ、右支払を本件事故による損害と認めることはできない。その他の雑費についても、その金額が、本件事故との間に相当因果関係を有する通常の損害乃至は被告が予見し、又は予見し得た特別事情の損害であると認めるに足りないし、如何なる部分が本件事故によつて生じた損害に該当するかも不明で損害額の算定が不能に帰するから、結局右全額について、被告に対し賠償義務を認めるべきではないといわねばならない。

四、以上によれば、被告は原告に対し(1)原告所有自動車修理費用金七万六、九九〇円、(2)右修理期間中右自動車を使用することができなかつたため要した費用金八万四、三七〇円合計金一六万一、三六〇円及びこれに対する訴状送達の日の翌日であること本件記録上明らかな昭和三七年二月一七日から支払済までの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払をなす義務があるものといわねばならない。よつて、原告の本訴請求は右の支払を求める限度において正当として認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九二条但書、仮執行の宣言について同法第一九六条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第二七部

裁判官 高 瀬 秀 雄

(別表省略)

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